マイナンバー(個人番号)は、行政手続きだけではなく、事業者でも取り扱われます。
そこで今回は、「事業者がマイナンバー(個人番号)を取り扱う場面」と「マイナンバー(個人番号)の利用範囲」について説明していきたいと思います。
【事業者がマイナンバー(個人番号)を取り扱う場面とは?】
番号法では、マイナンバー(個人番号)を取り扱う事務として、「個人番号利用事務」と「個人番号関係事務」の2つを定めています。
「個人番号利用事務」は、行政によって行われます。
行政機関から委託を受けた民間の事業者が「個人番号利用事務」を行うことがありますが、基本的に民間の事業者は、「個人番号関係事務」を行うことになります。
つまり、事業者は、「個人番号関係事務」を行う際にマイナンバー(個人番号)を取り扱うことになります。
【個人番号関係事務とは?】
「個人番号関係事務」とは、個人番号利用事務(行政事務)を処理するために必要となるマイナンバー(個人番号)を記載した書面を行政機関に提出する事務や、その他マイナンバー(個人番号)を利用した事務のことです。
具体的には、以下のようなマイナンバー(個人番号)を記載した書類を作成し、関係機関に提出する事務です。
◎税分野:源泉徴収票、支払調書など
◎社会保障分野:健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届など
例えば、事業者が講師に対して講演料を支払ったとします。
講師のマイナンバー(個人番号)を報酬の支払調書に記載し、提出をすることは、「個人番号関係事務」に当たります。
【マイナンバーの利用範囲はどうなっているの?】
事業者は、主に「個人番号関係事務」を行う場合にマイナンバー(個人番号)を取り扱います。
しかし、マイナンバー(個人番号)がいつでも自由に利用できるわけではありません。
マイナンバー(個人番号)を利用する際には、利用目的を特定する必要があります。
つまり、特定された利用目的の範囲内でしかマイナンバー(個人番号)を利用することはできないのです。
利用目的を特定するときには、「源泉徴収票作成事務」や「健康保険・厚生年金保険届出事務」などというように、従業員等が「自分のマイナンバー(個人番号)がどのような目的で利用されるのか」が一般的且つ合理的に予想できるほどに具体的に行う必要があります。
また、利用目的は、番号法で定められている事務の範囲内での利用であることが求められます。
例えば、事業者が従業員の管理のためにマイナンバー(個人番号)を社員番号として使用するとします。
「社員番号としての利用」というように利用目的を特定しても、番号法で定められている事務の範囲内での利用とは言えないため、認められないのです。
【利用目的以外でマイナンバー(個人番号)を利用することはできるの?】
本人の同意があっても、特定した利用目的以外でマイナンバー(個人番号)を利用することはできません。
個人情報保護法第16条第1項では、本人の同意があれば個人情報の目的外での利用が認められています。
一方の番号法では、以下の2つの場合に限って目的外での利用が認められています。
○激甚災害が発生したとき等に金融機関が金銭の支払をするために個人番号を利用する場合
○人の生命、身体又は財産の保護のために個人番号を利用する必要があり、本人の同意があるか、又は本人の同意を得ることが困難な場合
【特定した利用目的を本人に通知する義務はあるの?】
マイナンバー(個人番号)は、個人情報の1つです。
個人情報保護法の個人情報保護取扱事業者がマイナンバー(個人番号)を取得した場合には、個人情報保護法第18条第1項に基づいて、本人に対して利用目的を通知するか、あるいは公表することが必要となっています。
通知方法としては、社内LANにおける通知や利用目的を記載した書類の提示、就業規則への明記などが考えられます。
また、公表の方法としては、ウェブサイトに「プライバシーポリシー」の1つとして利用目的をあらかじめ公表する方法などが挙げられます。
従業員の扶養親族のマイナンバー(個人番号)のように、本人以外から個人情報を取得した場合でも、本人に対する通知・公表が必要となります。
なお、個人情報取扱事業者に当たらない事業者の場合には、通知や公表をする義務はありません。
尤も、任意で通知又は公表をすることに問題はありません。
【利用目的は変更できるの?】
特定していた利用目的を超えてマイナンバー(個人情報)を利用しなければならない必要が生じた際には、当初の利用目的と相当の関連性があると認められる範囲内で利用目的を変更することができます。
利用目的を変更した時でも、本人に対する通知又は公表が必要となります。
具体的に利用目的の変更が認められる例としては、雇用契約に基づいた給与所得の源泉徴収票作成事務での利用を当初の目的としていた場合に、雇用契約に基づいた健康保険・厚生年金保険届出事務などに利用する目的を追加する場合などが挙げられます。
なお、利用目的を後から追加・変更することは手間になります。
あらかじめ必要と想定される複数の個人番号関係事務を、利用目的として特定しておくことが望ましいです。
【バックアップファイルを作成することはできる?】
特定個人情報ファイル(マイナンバー(個人番号)をその内容に含む個人情報ファイル)が番号法で認められている範囲内で利用されている場合には、バックアップファイルを作成することが認められると考えられます。
なお、バックアップファイルを作成した際には、安全管理措置を講ずる必要があります。
【まとめ】
ここまで、「事業者がマイナンバー(個人番号)を取り扱う場面」と「マイナンバー(個人番号)の利用範囲」について見てきました。
事業者は、「個人番号関係事務」を行う際にマイナンバー(個人番号)を取り扱うこと、マイナンバー(個人番号)はどんな時でも利用できるのではなく、利用目的を特定しなければならないことが分かりました。
マイナンバー(個人番号)の利用目的は、番号法で定められている事務の範囲内でなければならないことに注意が必要です。