マイナンバーの「利用範囲」とは

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事業者はどのような場面でマイナンバー(個人番号)を取り扱うのか。マイナンバーに関する2つの事務

番号法では、マイナンバー(個人番号)をとりあつかう事務として、以下の2つが定められています。

・個人番号利用事務

・個人番号関係事務

このうち、「個人番号利用事務」については行政機関の事務となるため、民間の事業者(企業)がマイナンバーを取扱う事務は主に「個人番号関係事務」となります。
※民間の事業者でも、行政機関から事務の委託を受けた場合は「個人番号利用事務」となります。

個人番号関係事務とは?

それでは民間の事業者(企業)に関係のある「個人番号関係事務」とは具体的にどのような事務なのでしょうか。

番号法から解釈すると、『個人番号関係事務とは、マイナンバー(個人番号)を記載した書面を行政機関に提出、その他個人番号を利用した事務』ということになります。ちょっと分かりにくいですね。

具体的には税金給与計算社会保険関係の手続きです。
以下はマイナンバーを利用した事務にかかわる書類例です。

「社会保障分野」
〇健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得・喪失届
〇報酬月額算定基礎届
〇報酬月額変更届
〇健康保険被扶養者(異動)届
〇産前産後休業取得者申出書
〇育児休業等取得者申出書
〇育児休業等取得者終了届
〇国民年金第3号被保険者関係届

「税分野」
〇給与所得の源泉徴収票
〇給与支払報告書
〇退職所得の源泉徴収票
〇特別徴収票
〇報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
〇配当、剰余金の分配及ひ基金利息の支払調書
〇不動産の使用料等の支払調書
〇不動産等の譲受けの対価の支払調書

従業員の書類を作成し、行政機関や健康保険組合などに提出することにくわえて、たとえば講師にたいして公演料を支払った場合に講師の個人番号を報酬の支払調書に記載して提出することも「個人番号関係事務」にあたります。

会社はマイナンバー(個人番号)の利用目的を特定する必要がある

これまで見てきたように、会社は個人番号関係事務においてマイナンバーをとりあつかいますが、その際に利用目的を特定する必要があります。

利用目的の特定の方法については、「健康保険・厚生年金保険届出事務」や「源泉徴収票作成事務」といったように従業員の方(マイナンバー保有者)がどのような目的で利用されるのか、一般的かつ合理的に予想できる程度に具体的に特定する必要があります。

ここで注意しなければいけないのは、たとえば従業員管理のためにマイナンバーを社員番号として使用する、といったことは利用目的を「社員番号として利用」と特定していたとしても、その利用目的自体が番号法で定められている範囲を逸脱しているため認められません。

ここで、個人情報保護法やプライバシーマークに詳しい方は、

「本人の同意があればあらかじめ会社が特定した利用目的以外にマイナンバーを使用できるのではないか」

という疑問を持つかもしれません。

たしかに、個人情報保護法第16条第1項では、本人の同意がある場合に個人情報の目的外利用が認められています。

しかし、マイナンバーについては、

①激甚災害が発生したとき等に金融機関が金銭の支払をするために個人番号を利用する場合
②人の生命、身体又は財産の保護のために個人番号を利用する必要があり、本人の同意があるか、又は本人の同意を得ることが困難な場合

この2つの条件のいずれかに当てはまる場合のみ目的外利用が認められています。

そのため、この条件に当てはまらない場合にはマイナンバーは目的外利用が認められません。

マイナンバーの利用目的の通知義務

マイナンバーについても個人情報の一部のため、個人情報保護法に基づいて利用目的を本人に通知するか、もしくは公表することが必要です。あらかじめ公表しておく方法でもOKです。

従業員に利用目的を通知する方法には、「書類による提示」「就業規則への明示」「社内LANにおける通知」「HPへの掲載」といったものが一般的です。

あらかじめ通知の手段を講じておくことで取得のたびに通知する手間を省くことができるため、最近では多くの会社のHPにプライバシーポリシーのひとつとして利用目的を公表しているところも多いようです。

従業員の扶養親族のマイナンバーは本人以外から取得することになりますが、この場合においても本人への利用目的の通知または公表が必要です。その点でもHPへ掲載しておくのが便利だといえますね。

なお個人情報取扱事業者にあたらない事業者(会社)については利用目的の通知または公表をする法令上の義務はありません。しかし、いまの時代の流れを考慮すると、通知または公表の措置をとっておくことが無難であるといえます。

マイナンバーの利用目的の変更

もし、取得時に通知または公表した利用目的をこえてマイナンバーを利用する必要が生じた場合、その利用目的を変更することができます。

ただし、「当初の利用目的と相当の関連性があること」および「変更後の利用目的を本人に通知もしくは公表する」という条件つきです。

マイナンバー自体が法令によって利用目的を限定されているため、利用目的を変更するケースはあまり多くないかもしれません。
しかし、たとえば雇用時には「雇用保険の事務につかう」と利用目的をさだめていた後に、会社が社会保険を適用することになり、社会保険にかかわる事務にもマイナンバーを使用する必要がでてきた場合などが考えられます。

このように、利用目的をあとから追加していくことには手間が生じるため、あらかじめ想定される個人番号関係事務を特定しておく方が望ましいといえるでしょう。

マイナンバーのバックアップについて

マイナンバー(個人番号)もバックアップデータを作ることは認められています。バックアップデータを作成することで増加する漏えい等の事故リスクよりも障害などによる紛失リスクを重くみているということですね。
なお、このバックファイルについては番号法でさだめる安全管理措置を講じる必要があります。

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