マイナンバーの取り扱い業務を行う上で、マイナンバーの収集・保管・廃棄、といった工程が発生します。
各局面でどのような注意点があるのか、詳しく見ていきましょう。
事業者はどのような場合にマイナンバーの収集・保管ができるのか
番号法の第20条では、何人も、番号法第19条で定められた場合を除き、他人のマイナンバーを含む特定個人情報を収集または保管してはならない、と規定されています。
事業者は、「個人番号関係事務の処理に必要な範囲」で、マイナンバーを収集・保管することができます。
マイナンバーの収集とは
ここでいう「収集」とは、具体的にどのような行為があたるのでしょうか。
定義的には「収集」とは「集める意思を持って自己の占有に置くこと」、とされています。
たとえば、他人からマイナンバーを記載したメモを受け取ること、人から聞き取ったマイナンバーをメモすることのように直接取得する場合のほか、パソコンを操作してマイナンバーを画面上に表示させて書き取ったり、その画面を印刷することなども含まれます。
これに対して、マイナンバーの提示をされただけでは、自己の占有下におくわけではないので、「収集」にはあたりません。
マイナンバーの保管とは
つぎにマイナンバーの「保管」についてみてみると、「保管」とは、定義としては「自己の勢力範囲内に保持すること」とされています。
言葉が法律的で分かりにくい表現になっていますが、ようするにマイナンバーが書かれている書類やデータ(電磁的記録)を手元に置いておくことがこれにあたります。
具体的にはマイナンバーを記載された書類を受け取って、支払調書作成事務の担当者に受け渡す立場の人が、その書類を手元においておくことも「保管」にあたります。このケースの場合だと、事務処理に必要な範囲を超えて保管しているとして番号法20条違反に該当する可能性もあるので、マイナンバーを無闇に保管することは極力避けて、「保管場所・取扱い担当者を限定する」といった措置をとるのが望ましいでしょう。
本人確認書類の取扱いについて
マイナンバーの提供をうけるときに、個人番号カード・通知カード・身元確認書類などの「本人確認書類」を提示されることがあります。
この提示された「本人確認書類」のコピーをとっておいたほうがいいか、疑問をもっている担当者も多いようです。
この点、法令上は本人確認書類のコピーをとってはいけない、といったこともありませんし、逆にとらなければいけない、といったこともありません。
あくまで提示をうけた事実があればいい、ということになります。
そのため、コピーを保管しておくかどうかは会社の判断に委ねられているということになりますが、保管しておく場合には、適切な安全管理措置をとっておく必要があります。
マイナンバーの保管期限について
個人番号関係事務のために取得・保管したマイナンバーはいつまで保管しておくことができるのでしょうか。
この点については、「その個人番号関係事務を行う必要がある限り」保管し続けることができます。
継続的に雇用している従業員から提供されたマイナンバーについては、社会保険や年金の届出事務や給与の源泉徴収事務などのために毎年マイナンバーを利用する必要があるため、その期間はマイナンバーを保管し続けることができます。また、従業員の中に求職者がいる場合には、復職時期が未定であったとしても雇用契約が継続しているとみなされるため、マイナンバーを保管しておくことができます。育児休業・介護休業者のマイナンバーについても同様です。
これにくわえて、法律によって一定期間の保管義務のある書類、たとえば扶養控除等申告書であれば7年、といったようなものはその期間は保存しておいて構いません。
しかし、これまではこれらの法定保存期間の定められた書類については、その期間を超えて保存していても特に問題はありませんでしたが、マイナンバーが記載されることになったことによって、これからは法定保存期間の過ぎた書類については速やかに廃棄することが求められるようになります。
退職者のマイナンバーの保管については、退職後速やかに廃棄する必要がありますが、たとえば退職後に繰延支給される賞与があるなど源泉徴収票の作成が必要となることがあります。こういった場合はその事務が終了するまでマイナンバーを保管しておいて構わないと解されています。
さらに、退職後に再雇用する、といったケースがありますが、この場合も継続的に雇用されていくとみなされるため、マイナンバーを保管しておくことができます。
従業員が海外へ赴任する場合や海外から赴任してくる場合にはどうすればいいのでしょうか。
まず、海外へ赴任する場合、帰国後も同じマイナンバーを使用することになるため、海外赴任中もマイナンバーを保管しておくことができます。
逆に海外から外国人が赴任してくる場合、その従業員が日本国内に住民票を有する場合にはマイナンバーを付与されることになるため、マイナンバーの取得・保管・廃棄と他の従業員と同じ取扱いをすることになります。
出向者や転籍者のマイナンバーの取扱いについて、出向者は出向元との雇用契約を維持したまま、出向先との雇用契約を締結するものと解されているため、出向元の会社でもマイナンバーの保管を継続することができます。
しかし、転籍者については転籍元との雇用契約は終了するものと解されるため、マイナンバーは退職者と同じように廃棄することが求めれます(法定保存期間は保存しておく必要があります)。
出向・転籍についてはもう一点注意することがあります。
出向者・転籍者のマイナンバーを出向元・転籍元の事業者が出向先・転籍先の事業者に提供することは番号法19条で認められていないためできません。
出向先・転籍先の事業者はマイナンバーの提供を直接本人からうける必要があります。
ただし、従業員の出向元・転籍元の事業者が、出向先・転籍先の事業者と委託契約又は代理契約を交わして個人番号関係事務の-部を受託し、出向者・転籍者から番号の告知を受け、本人確認を行うこととされている場合は、出向元・転籍元の事業者が改めて本人確認を行った上で、出向先・在籍先の事業者に個人番号を提供することも認められます。
その他に考えられるケースとして、会社の吸収合併に伴ってマイナンバーを収集・提供することが考えられますが、合併その他の事由による事業の承継に伴ってマイナンバーを収集することは番号法第20条、第19条5号で認められています。
マイナンバーの廃棄・削除について
マイナンバーは様々な書類に記載されますが、廃棄の際にもいくつか注意が必要です。
たとえば、マイナンバーが記載された書類で法定保存期間の過ぎたものを何らかの事情で残しておきたい場合には、マイナンバーが記載されている部分をしっかりマスキングや削除をしておく必要があります。
そして、マイナンバーを廃棄・削除した場合には、その廃棄・削除したことを記録して保存しておくことが求められています。